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2024/04/26 14:28 |
マイケル(骨格標本)
マイケルといえば、最近はマイケルジャクソンを思う人が多いだろうが、全く違うので最初に断っておきたい。

マイケルは、夢に出てきた子を具現化させてみたもの。
P5230048.jpgP5230051.jpg






夢に出てきた・・・と言っても、実在するものが夢に出てきただけであるが、とてもリアルな夢だった上、起きてからも詳細を覚えていて、どうしても作らざるを得ない心境になっていた。
新しい試みと改造と、そして夢のおかげかかなり集中して作れたので、失敗もなく良い出来であった。
惜しむらくは、「骨格標本だったマイケルに肉付けしたらどんな顔になるのか?」といったとき、自分のデザイン能力の無さが顕著に出てしまったことだろう・・・。
マイケルの骨格は、日本3Bサイエンティフィックのミニ骨格ギフト(標本でなくてグッズ扱いの安いもの)を使用。ミニSDにとても良いサイズ。
P5230057.jpgP5230054.jpg






手首は細すぎて加工が難しかったため、残念ながら関節パーツにホットボンドで固定。通常のMSDジョイントとなっている。最初はおそるおそるのカスタム開始だったので、足首も同じようにホットボンド固定していたのだが、飽き足らず(苦笑)・・・・こうなった↓
P6060089.jpgP6060083.jpg








写真がこれだけしかないのでわかりづらいが、大腿骨には縦にドリルで穴を通し、通常のSDの大腿部パーツのようになっている。下腿骨は穴が開けられないので、見たとおり、関節に横向きに穴をあけ、下腿骨にはボルトを通して固定してある。関節の凸凹面はもちろん人体標本なので、膝は正しくはまって滑らかに動く。自立も十分可能だった。グッズとはいえ、骨格標本をテンションゴムで繋ぐと自立する・・・人体のすばらしさを改めて感じた。

残念なことに、撮影時に本来のマイケル用のウィッグを紛失しており、ウィッグ乗せただけ状態になっているのが悔やまれてならない。実のところマイケルは現存していないが、また作ってみたいと思う、お気に入りの一体になっている。


夢の内容はこんな感じ・・・
<旧サイトのマイケルお迎え小説より転載>
深夜。
立ち入り禁止のロープをこっそり潜り抜けた。

廃校になった小学校。
龍はここで6年間過ごした。
跡地にはマンションが建つらしい。
地域住民に、工事の説明会も行われた。
明日には、取り壊しが、はじまる。

鳥小屋。金魚と亀のいる池。何故か寛永通宝を見つけた裏庭。
いまは何もなく池の水も抜かれて、ひっそりと静まり返っている。

龍は昔から孤独を好んで、本ばかり読んでいた。
一日三冊の貸し出し図書では間に合わず、
放課後トイレに篭って、施錠・巡回が過ぎるのを待ち、
鍵の壊れた高い窓から図書室に忍び込んで、
数時間本を読んだあげくに2~3冊取って帰った。

今。
施錠とは名ばかりで、ガラスが割られてどこからでも入れる。
巡回もない。
校舎に入り、懐かしさに駆られて、図書室の下の窓枠に足を掛け、上の窓を開けてみた。
が。大きくなった龍の身体は、窓を抜けることが出来なかった。
時の流れを感じつつ、下の窓から入ってみる。
本棚は昔どおりに並んでいたが、本は一冊もなかった。

窓からの月明かりが、本棚の長い影を床に広げている。
机・・・貸し出しカウンター・・・こんなに低かったかな。

砂でざらざらの床。日に焼けたプリントや貸し出しカードが落ちている。
廃墟。

図書室を後にして、廊下を歩く。
耳が痛くなるほどの静けさの中、足音だけが異様に響く。
非常灯さえ、もう点いていない。

職員室 給食室 保健室。
喘息の発作を起こして、保健室でよく休んだ。怪我も良くした。
割れた竹の柄のモップを使っていて、転んで手に竹が貫通したときは痛かった。
肩をたたかれて、勢いよく振り向いたら、とがった鉛筆が待っていて、頬に突き刺さったこともあった。
よく首じゃなかったと思う。
給食。食べきれずによく残って食べさされた。
好き嫌いはなかったけれど、パンが食べきれない。当時から御飯食が好きだった。

渡り廊下を渡って、教室へ向かう。
壊れた机や椅子が散乱している。
破れたカーテン。
カーテンに隠れてぐるぐる回ったりぶら下がったりしているうちに、カーテンが外れたり破れたりしたものだ。
6年のフロアの一番端っこ、4組の、教室の後ろにおいてある、鞄置きの棚。その一番窓際の隅。
小さく、「平成4年卒」と彫られている。
龍が彫ったものだ。
6年間、小学校の備品には一切傷をつけず、落書きさえしなかった龍が唯一残したもの。
まだ、残っていた。
つたない彫りを指でなぞりながら。知らず知らず、笑みがこぼれる。
当時から、自分がここにいたことを、誰かに知ってほしくて。
ココに、平成四年と彫った誰かがいることを、後の人に想ってもらいたくて。
何かを残したくて、生きていた・・・。

4階の窓から、月が美しく見える。
夜風が吹き込んで冷たい。
石油ストーブも、もうない。

教室を後にして、再び渡り廊下を渡って別校舎に移る。
美術室・理科室・化学薬品倉庫。
独特のにおいがある。

空っぽになった美術室。石膏や粘土の欠片、使い古しの絵の具チューブが落ちている。
廃墟、とういう名の芸術が完成されているな。と苦笑する。

理科室。教室は例によって何もなく・・・水道も枯れていた。
理科室に続く理科準備室。
図書室の次に龍がお気に入りだった場所。
図書室にはない、専門書がたくさんおいてあり・・・人の性交からDNAに関すること、
ホルマリン漬けやそれ以外の標本作成方法等、龍はここで覚えた。
昼休みや放課後、ここにもぐりこんでは本を読んだり探検したり・・・
当時の様子が目の前に浮かび上がり、今でもわくわくする。
だが、今は、何もない。古い本のカビっぽいにおいだけが、名残を残している。

そして、その奥が標本室。
文化祭の肝試しには大賑わいの場所だったが・・・
普段はけして誰も寄り付かないところ。
そして、普段は龍の隠れ家になっていたところ。
鍵も開いており、すんなり入ったそこは・・・
当時の標本がぎっしり詰まった狭さとは打って変わって、がらんと広い空間だった。
誰かが割ったのか、瓶の欠片が散らばっていた。
昔のガラス瓶は、厚みが均等でないから中身がゆがんで見えるし、割れやすい。
割れにくくするためにやたら分厚く、重たい。
おまけにそれにホルマリンと標本が入っていれば・・・
小さな子供に動かせる重さではなかった。
何故か悔しかったことを、よく、覚えている。

当時の標本室。
ホルマリン漬けの瓶が並び、剥製や昆虫標本も少々。そして人体模型。
大人の等身大骨格標本は、お馴染み、子供たちの恐怖のシンボル。
当時から身体の小さかった龍には自分の二倍もあるように思えた。
その骨格標本も、今はもうない。
入っていたケースだけが、部屋の隅に立っている。
空っぽの棚が、立ち並ぶ・・・。

「・・・龍、くん。」
不意に名前を呼ばれた気がして、振り返った。
姿がない。でも、その声には、遠い昔、聞き覚えがあった。
「・・・龍、くん。」
声の方向を探す・・・骨格標本のケースの後ろ。死角になって見えない。
回り込む。

「・・・・君は・・・!」
小さな、人体模型が落ちていた。吊りスタンドのチェーンが切れて落ちたらしい。
「龍くん、おおきくなったねぇ。久しぶりだな。覚えててくれたみたいで嬉しいなあ。」
人体模型は、無残に崩れた姿勢のまま、弱弱しく微笑んだ。
「・・マイケル・・君。」
台座に、Michelと彫ってあるこの人体模型は、本当に良く出来ていた。
身長は50センチ程度、大きな骨格標本の横にいつも並んで置いてあり、
身長が低く、いつもうつむき加減で歩く龍にとっては、いつも目に付く存在で、
気になって仕方がなかった。
「フレッドは、新しい学校に行っちゃったんだけど・・・僕は置いていかれちゃった。」
フレッドとは、大きな骨格標本のこと。マイケルとかフレッドとか彫ってあるものだから、
当時龍たちの間では、本物の人間の骨だというまことしやかなうわさが流れていた。
「フレッドか・・・。アメリカもややこしいことするよな、標本に型番じゃなくて名前付けてるんだから・・・」
まぁ、キラやサラや付けてる某も変わらないか・・・と苦笑する。そしてふと想う。
それが、問題なんだ。
キラやサラを見ても、どこぞのシリコンボディの等身大ドールを見ても、人間とは思えないのに、
骨格、という状態になると、人間だか人形だか分からなくなる。
もっとも、専門家が見れば本物か偽者かわかるのだろうが・・・いや。
フレッドも、マイケルも、もともと原型は、間違いなく、本物の人間の骨だ。だれかの骨格のコピーだ。
そしてその骨格を提供した本人はこの世に居ない・・・けれど、形は残っていて、
たぶんこの骨格に肉付け師が肉付けすれば、ひとりの、過去に生きていた人間の顔が出来上がる。
フレッドとなづけられた、すべての骨格標本が皆、同じ顔になる。マネキンではなくて。過去に生きていた人の顔に。
人の顔はマスクをとったり、写真からサイズをつければ似た顔は作れる。しかし、骨格は外見からは型取りができない。


当時の自分はうすうすそれを感じていて・・・。標本が本物であろうとセラミックの作り物であろうと・・・
実際の人間が、それを作るために一人身体を提供したこと・・・
大人の骨格はまだしも、そう、マイケルのような子供・・・乳児・・・胎児にいたるサイズの子供が、
身体を提供するという事実。
その模型が何百何千と工場生産されたものであっても。目の前のマイケルには誰かの命がかかっている。

「龍君、また、考え事?」
我に返る。マイケルがじっと見つめている。
「内臓や骨格やさらけ出して立ってるのって・・・どんなかな、と思って。」
龍は薄く微笑んだ。小さい頃、マイケルと言葉を交わしたことはない。
マイケルが、怖かった。
大きなフレッドも怖かったけれど、6年生頃には献体という言葉も知っていたから。
献体する勇気はすごいと感心こそしたけれど。
自分より小さな子供が、標本という時の流れの止まった世界に入ること。
作り物であるにせよ、内臓まですべてを曝け出して永遠に立ち続けるということ。
そして、暴力的なまでに相手に「ヒトの身体の構造」という事実を突きつけるという仕事。

下半身が丸出しで、笑われ、馬鹿にされ。
理科の実験中には子供たちに弄ばれ。
時には怖いと泣き出され。
手垢と埃にまみれて。
それでも、それが仕事だと、そこに居る・・・
大人になって、献体する勇気と覚悟があれば、できるかもしれない。
でも、自分には無理・・・その視線に耐えられない。
小さな龍は、マイケルと自分を重ねては、
それを平然とやってのけるマイケルに畏れのようなものを感じていた・・・

「マイケル君、校舎、明日取り壊し・・・知ってる?」
「うん、知ってる。もうだめなんだろうなーと思ってた・・・。」
「ウチに来ないか・・このままじゃ、壊れるだけだよ。
 僕は、人形師になったんだ・・・その壊れた手も、剥げた顔も、治してあげられる。」
「・・・僕の仕事はこの学校と共に終わったんだよ・・・」
人形以上に・・・人体模型は大切に、と思う。
こんなものが、自分の身体の中にも入っているのかと、不思議になったり気持ちが悪くなったりするものだけれど。
可愛らしい人形のように、大切にされるものでもないから。
それでも、仕事のために健気に頑張る本物のヒトガタだから。
「マイケル君・・・うちに来て欲しい。」
今まで霧の中に居た、ヒトガタに対する畏敬の念・・・追い続けようとするのにすぐ見失う、想い。
マイケルを見ていると、わかる気がする。

ヒトガタはヒトを映す鏡・・・
「貴方はこんなことを感じている」
人体模型風に言うなら
「貴方の中にはこんなものが入っている」
心の中も含めて。

「マイケル君、自分の仕事は終わったなんていわないで・・・僕と一緒に来て。」
龍は頼んだ。
マイケルは観念したように微笑んだ。
「龍くんはね、いつかそんなことを言い出すんじゃないかなーって想ってたよ。」
龍は、そっとマイケルを抱き上げた。当時は自分と同じ大きさくらいに感じられたのに。
今は、腕の中にすっぽり納まるサイズだ。
小さい。
懐かしい。
愛おしい。
「ちょっとホルマリンとかカビとか埃とか・・・いろいろ臭うけど。宜しく。」
「うちもそんなものだから・・・帰ったら二人ともお風呂だな。」

時刻はもうすぐ丑三つ時。
月明かりが二人を照らしていた。


<終>

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2010/06/25 14:00 | Comments(0) | 人形関連

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